女性特有の病気

わかりやすい「子宮筋腫」!症状や治療、手術方法について全まとめ!

30~40代の女性の20~30%にみられるという子宮筋腫は、良性の腫瘍であり症状がなければそのままにしておいても大丈夫ですが、筋腫が大きくなると腹痛や腰痛、不正出血、頻尿、便秘、貧血などさまざまな症状がでてきます。ここでは、子宮筋腫にはどんな種類があるのか、筋腫により起こる7つの症状、症状別の治療方法について、婦人科で働く看護師が詳しく解説していきます。

Ⅰ.子宮筋腫とは?

子宮筋腫とは、子宮の壁にできるコブのようなものであり、良性の腫瘍です。
子宮筋腫ができる原因は解明されてはいませんが、エストロゲンなどの女性ホルモンが大きく関係するということはわかっています。

子宮筋腫は、婦人科系疾患の中では最も多く、生殖年齢の女性の20~30%は子宮筋腫を持っているとされています。また、ほとんどは子宮体部に発生し(約95%)、1つだけではなく多発する(沢山できる)ことが多い(約60~70%)のが特徴です。

子宮筋腫は、子宮内の色々な場所にできますが、できる場所によって特徴が異なります。では、子宮筋腫の発生部位別にそれぞれの特徴について見ていきましょう。

Ⅱ.子宮筋腫の3つの種類

子宮筋腫は、筋腫の発育方向によって、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の3つの種類に分類されます。

①粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)

定義

筋腫が子宮内膜直下に発生し、子宮腔内にむけて発育するもの

発生頻度

5~10%

特徴

3つの中で最も症状が強い

②筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)

定義

筋腫が子宮筋層内に発生し発育するもの

発生頻度

約70%

特徴

3つの中で最も多く、多発しやすい

③漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)

定義

筋腫が子宮漿膜の直下に発生し発育するもの

発生頻度

10~20%

特徴

無症状のことが多い
茎捻転を起こすと急性腹症(急激な腹痛がり、緊急手術が必要になる)をきたす

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Ⅲ.子宮筋腫の7つの症状

子宮筋腫の代表的な症状は以下の7つあります。しかし、必ずしも症状がでるとは限らず、無症状のまま経過する方もいます。また、発生部位や大きさによっても症状は様々ですが、どのような症状があるのかをみていきましょう。

①過多月経

毎回の月経量が異常に多く、日常生活に支障をきたすほどのものをいいます。また、レバーのような血のかたまりが2日以上続くことも特徴のひとつです。

②月経困難症

月経に随伴して起こる病的な症状であり、日常生活に支障をきたす程のものをいいます。
症状としては、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつ等が見られ、月経直前に症状が出現し、月経が終了すると症状も消失します。

③不正出血

子宮筋腫が充血したり、子宮筋腫の発育につれ子宮内膜が引き伸ばされて薄くなり、出血しやすくなります。

④不妊

子宮筋腫はさまざまな場所にできますが、できた場所によっては、受精卵が卵管を通る妨げになったり着床の妨げになり、不妊の原因となります。

⑤貧血

子宮筋腫があると過多月経になるため出血量が増えるだけでなく、月経期間も長くなるため、貧血になりやすくなります。

⑥便秘

子宮筋腫ができる位置によっては直腸を圧迫してしまうことがあります。直腸を圧迫されることにより、便が出にくくなり、便秘を引き起こします。

⑦頻尿、排尿障害

子宮筋腫が膀胱や尿管を圧迫した場合は、頻尿や排尿障害(尿がでにくくなる)を起こす場合があります。

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Ⅳ.子宮筋腫の治療

子宮筋腫の約半数は無症状で経過します。
また、女性ホルモンの影響を非常に受ける疾患であるため閉経後、筋腫は小さくなります。

そのため、症状が強い場合や筋腫が大きい場合は治療をしますが、症状が軽い場合は経過観察する場合がほとんどです。

極めて稀ではありますが、悪性化する可能性があり、悪性の疑いがある場合は症状があまりなくても手術して子宮を取り除きます。

悪性の疑いあり 悪性の疑いなし
症状が
強い
症状なし・軽度
挙児希望
なし
挙児希望
あり
手術療法
単純子宮全摘術
手術療法
または
保存療法
経過観察
(3~4か月毎の検診)

1.悪性の疑いがある場合

  • 筋腫が8センチ以上ある
  • 筋腫が急激に大きくなる
  • MRIで悪性の所見がある

上記の場合は、悪性であると判断し手術療法を行います。
手術にも色々な方法がありますが、悪性を疑う場合は「単純子宮全摘術」もしくは、「腹腔鏡下子宮全摘術」を行います。

※「単純子宮全摘術」とは
お腹を開腹し(お腹を切り)、子宮のみを取り除く手術のことをいいます。婦人科の手術では最も基本的な手術となります。

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※「腹腔鏡下子宮全摘術」とは
腹腔鏡とは、上記の写真のように、お腹を切って手術をするのではなく、お腹に細い管を数か所入れて手術をする方法です。開腹に比べると、傷口も小さく、侵襲も少ないため開腹術よりも早く退院できますし、術後の痛みも開腹術より少なくてすみます。
腹腔鏡下子宮全摘術とは、この腹腔鏡を使って子宮を全摘する方法です。

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2.悪性の疑いがない場合

悪性の疑いがなく良性であると判断された場合は、まずは症状がどの程度であるか、筋腫の大きさ、挙児希望(赤ちゃんを生みたい希望があるか)で治療法が異なります。

①症状が強い場合

  • 過多月経により不正出血量が多く貧血がひどい場合
  • 圧迫症状が強い場合
    子宮筋腫により膀胱や直腸が圧迫されることで、頻尿や排尿困難、便秘、腰痛などがあり、症状が強く辛い場合
  • 月経困難症などで腹痛などの症状が強い場合

上記のような症状があり、生活に支障がでるような場合は「手術療法」または、「保存療法」を行いますが、挙児希望(赤ちゃんを生む希望)があるかないかによっても治療方法の選択肢が変わってきます。

a.挙児希望がない場合

今後、赤ちゃんを望まない場合は、「単純子宮全摘術」もしくは、「腹腔鏡下子宮全摘術」を行います。

※「単純子宮全摘術」とは
お腹を開腹し(お腹を切り)、子宮のみを取り除く手術のことをいいます。婦人科の手術では最も基本的な手術となります。

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※「腹腔鏡下子宮全摘術」とは
腹腔鏡とは、上記の写真のように、お腹を切って手術をするのではなく、お腹に細い管を数か所入れて手術をする方法です。開腹に比べると、傷口も小さく、侵襲も少ないため開腹術よりも早く退院できますし、術後の痛みも開腹術より少なくてすみます。
腹腔鏡下子宮全摘術とは、この腹腔鏡を使って子宮を全摘する方法です。

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b.挙児希望がある場合

赤ちゃんを望む場合は、子宮を残さなくてはならないため、筋腫のみを核出する「筋腫核出術」を行います。手術前に「GnRHアゴニスト療法」を行って筋腫を小さくさせてから手術を行うこともあります。

※「筋腫核出術」とは

筋腫核出術は、不妊や挙児希望など子宮を取りたくない患者さんに行う手術方法であり、子宮を温存し、筋腫のみを取る手術方法です。

筋腫核出術にはお腹を開腹して行う方法や、膣から筋腫を取る方法、また腹腔鏡下で筋腫を取る方法などいくつかの方法があります。膣式や腹腔鏡下で行う方法は侵襲も少なく患者さんへの負担も少ないため良いように思いますが、筋腫が大きい場合は適応でない場合もあり、すべての方が行えるというわけではありません。筋腫がとても大きい場合は開腹して筋腫核出を行わなければならないこともありますので、医師とどの方法で行うかは相談しましょう。

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※「GnRHアゴニスト療法」とは

偽閉経療法であり、閉経がきたのと同じ状態にします。子宮筋腫はエストロゲン依存性に発育するため(女性ホルモンの影響を受けるため)、閉経がくると筋腫は小さくなります。GnRHアゴニスト療法とは、この閉経の効果を利用して、薬でわざと排卵を止め、閉経がきたのと同じ状態にすることで、筋腫を小さくします。

②症状がない、もしくは軽度の場合

子宮筋腫のある方の中でも約半数は症状がない、もしくは軽度のことが多く、その場合は特に積極的に治療はせずに3~6か月毎の検診で筋腫の成長や症状の増悪がないかなど様子をみます。筋腫が大きくなる、症状が強くなるまでは何もせず経過観察とすることがほとんどです。

③手術を望まない方の場合

手術療法を希望しない方には、「子宮動脈塞栓術(UAE)」「MRガイド下集束超音波療法(FUS)」で子宮筋腫を小さくする方法を行うこともあります。

※「子宮動脈塞栓術(UAE)」とは

子宮筋腫に栄養を与えている血管を遮断することで、子宮筋腫に栄養が行かなくなり、子宮筋腫が壊死・縮小させ症状を和らげる方法です。

太ももの血管(大腿大動脈)からカテーテル(細い管)を入れ、子宮の動脈までカテーテルを進めます。子宮に栄養を与えている血管まで到着すると、その血流が止まるように塞栓物質を詰めます。血流が途絶えた子宮筋腫は次第に壊死し縮小します。
子宮動脈塞栓術(UAE)は手術と比べると低侵襲であり、入院期間も短く、社会復帰も早くできます。

※「MRガイド下集束超音波療法(FUS)」とは

子宮に集束した超音波を照射し、子宮筋腫を熱で固める(凝固させる)治療法です。熱を照射された筋腫は、次第に壊死し、数か月かけて組織内に吸収されます。

超音波により軽度の火傷を起こす場合もありますが、それ以外の合併症は少ない治療なので、他の治療法にくらべると安全性は高いと言えます。しかし、1回の治療に3~6時間かかることや、残った筋腫が再び増大するといったデメットもあります。

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Ⅴ.さいごに

子宮筋腫の治療方法は、症状や、大きさ、挙児希望があるかないかによっても方法が異なることがお分かり頂けたでしょうか?
手術方法も色んな方法がありますが、病院によっては行っている治療と行っていない治療方法があります。

例えば、子宮を全て取る手術(子宮全摘術)でも、腹腔鏡下で取れる病院と、お腹を開腹して取る病院とがあります。私の勤務先でも、数年前までは子宮を全摘する場合は必ず開腹手術を行っていましたが、腹腔鏡を使える医師が来てからは、腹腔鏡下で子宮全摘ができるようになりました。腹腔鏡の手術は傷口がとても小さく、傷口はほとんどわからなくなるでしょう。しかし、開腹の場合は、傷口が大きく、人によってはケロイドのように傷口が残る方もいます。

何が言いたいかと言いますと、どのような手術ができるのかは、医師の技術によって、また病院に機械があるかないかによっても手術方法が変わる場合があるのです。子宮筋腫の手術一つとっても、A病院では開腹しかできないが、B病院では色んな手術の方法が選択できる。といったように、病院により治療方法が選べる場合と選べない場合があります。

子宮筋腫の治療は比較的緊急性が少ないため、色んな病院で治療方法を聞いてみてもいいかもしれません。子宮を取る、取らないも病院の方針によっても異なることもありますので、自分が納得するまでセカンドオピニオンを受けるなどして、納得した治療方法を選択されることをオススメします。

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