基礎知識

看護師が教える!切迫早産で入院すると「退院」はいつになるのか?

切迫早産の退院

切迫早産になると長期入院になることが多いため、一体いつ退院ができるのかはとても気になると思います。赤ちゃんは早産になればなるほど、死亡率や障害が残るリスクが高くなるため、正期産になるまでは極力お腹の中で成長するのが一番です。そのため、赤ちゃんが万が一胎外に出てきても大丈夫と言えるまでは入院管理が必要になることが多いでしょう。ここでは、私の体験談を元に、退院の目安から、退院後の生活、退院後の出産時期についても説明していきます。

Ⅰ.切迫早産で入院すると、いつ退院できる?

切迫早産で入院すると、いつ退院になるのかは、

  • お腹の張り具合
  • 破水の有無
  • 子宮頸管の長さ
  • 赤ちゃんの状態
  • 妊娠週数

によっても異なるため、一概に「退院はいつになる」と言い切ることはできません!
1~2週間で退院できる方もいますが、切迫早産の入院の場合は長期入院になる方も多く、その場合は妊娠35~36週あたりを退院の目安としている病院が多いでしょう。

私も切迫早産で妊娠26週に緊急入院となりましたが、妊娠36週までは入院が必要と言われていました。

Ⅱ.なぜ妊娠35~36週頃に退院するの?

なぜ妊娠35~36週頃まで入院が必要なのでしょう?
その理由は、早産になればなるほど、赤ちゃんに悪影響があるからです!

まずは以下のグラフをご覧ください!
「早産になった場合の赤ちゃんの生存率」をグラフ化して現したものです。早い週数で生まれた場合の生存率・死亡率に着目してご覧ください。グラフ引用:Mercer  BM ;Preterm premeture rupture of the membranes:Obstertics and Gymeclogy 101:178-193,2003

上のグラフをみてわかることは、
分娩週数が早ければ早いほど、「生存率が低く、死亡率が高い」ということがわかります。また、妊娠35~36週あたりからは、生存率はほぼ100%に近くなっているということもわかりますね。

通常、赤ちゃんは正期産といわれる妊娠37週~42週未満に出産しますが、切迫早産の場合、この正期産よりも早くうまれてくる(早産になる)リスクがあります。早産になった場合は、上のグラフでも見たように週数が浅いほど生存率も下がるため、なるべく正期産に近い週数で生まれてくることが赤ちゃんの死亡率や障害が残るリスクを減らすことができるのです!

まず、早産になった場合にカギとなる週数が妊娠34週と言われています!

①早産は妊娠34週がカギ!

早産になると、死亡率や障害が残ってしまうリスクが上がるのですが、そのボーダーラインとなる週数が妊娠34週であると言われています!

胎児の肺は妊娠26週に構造が完成し、妊娠34週に肺の機能が成熟します。
そのため、妊娠34週になると、自力で呼吸ができるようになるため、胎外生活が可能になります。

自力で呼吸ができないと、生まれてきてしまっても、自力で呼吸ができないため胎外生活に適応できません。つまり早産で生まれてきてしまった場合は、この妊娠34週以前であるか34週以降であるかが、赤ちゃんの呼吸に大きく関わってくるため、最低34週まではお腹の中にいることが重要なのです!

②なぜ退院は34週ではなくて35~36週なの?

ではなぜ、退院は妊娠34週ではなくて35~36週なのでしょうか?34週までお腹にいればいいのだから、34週に退院でも問題ないのでは?と思うかもしれません!

妊娠34週に肺の機能が成熟するため、万が一出産になってしまっても自力で呼吸はできますが、やはり正期産に比べると、脳性麻痺や発達遅延などのリスクも高いため、正期産(妊娠37週~42週未満)に出産するのが望ましいとされています。

正期産で出産すべきなら、じゃあ妊娠37週まで入院すればいいじゃない?36週に退院しなくても、あと1週間もすれば正期産になるんだから、入院させてくれればいいじゃない!

確かに、正期産で生むのがベストなんだけど、点滴もすごく副作用があったよね?治療のために使用しているものだけど、赤ちゃんに全く影響がないわけではないんだ!

できることなら薬はつかいたくないけれど、薬を使うことによる赤ちゃんへの影響と、早産による赤ちゃんへの影響を天秤にかけた時に、どちらの方が赤ちゃんに悪影響を与えるかを考えて治療をしているんだよ!
だから、長く治療をすればいいっていうものでもないんだよ!

切迫早産の点滴による副作用や、薬が赤ちゃんに与える影響について、さらに詳しく知りたい方はコチラもご覧ください!【プロが教える!4つの子宮収縮抑制剤の効果・副作用の全知識!!

じゃあ妊娠35~36週あたりが、赤ちゃんがでてきてもまず大丈夫といえるギリギリのラインってことなんですね?

その通り!34週に肺機能は成熟するけど、もう少しお腹の中にいた方が赤ちゃんにとってはいいんだ!35~36週なら、生まれてきてもまず大丈夫だろうって言える週数なんだよ!

妊娠35~36週に退院する理由がわかりましたか?
切迫早産で入院するとほとんどの方は、ウテメリン(子宮収縮抑制剤)という子宮の収縮を抑える点滴を、入院中はずっとおこないます。
この点滴は、基本的には「もし赤ちゃんが生まれてきても大丈夫」という妊娠35~36週になるまでは続けます。

点滴は自宅ではできませんよね?そのため、
退院の目安は「点滴が止めることができる時期」
つまり、「もし赤ちゃんが生まれてきても大丈夫」という時期
妊娠35~36週になる
というわけです。

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Ⅲ.退院後の生活はどうすればいいの?

一番はじめに「妊娠35~36週あたりを退院の目安としている病院が多い」と言ったように、退院はおそらく妊娠35~36週頃になると思います。

私の場合も、妊娠36週で点滴を止めて退院し、37週までは病院でしていたのと同じような生活(なるべく安静に)を自宅でもして下さい!と言われていました。
37週を超えると正期産になるため、いつ生まれてもいい時期なので、特に安静にする必要はなく、普通に生活してもらってもいいとのことでした。

妊娠週数 退院後の生活
退院~妊娠37週まで 入院中と同じように極力安静に生活をする
妊娠37週以降 安静度は気にせず普通に生活をしても大丈夫

※特に何も問題がなければ私が医師から言われたように過ごすので大丈夫ですが、治療方針や母子の状態によっては退院時期や安静度は異なる場合もありますので、必ず主治医に退院後の生活については確認するようにしましょう。

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Ⅳ.退院後、出産はいつ?点滴を止めてそのまま出産にならないの?

退院後の出産の時期は人によって違うため正確にいつ!と言い切ることができません。切迫早産の方は早産にならないかずっと心配してきたでしょうから、いつ出産になるのかはとても気になるところだと思います!

正直なところ、出産時期はわからない!というしかないのですが、約2割の方は退院時にウテメリン(子宮収縮抑制剤)の点滴を止めることで、陣痛・出産になってしまいます。

これは、「張り返し」と言うもので、点滴を止めることで、今までお腹の張りを抑えていた薬剤が切れてお腹が張りやすくなり、そのまま陣痛・出産になってしまうのです。

実は、私もその一人であり、予定では36週で点滴を止めて一旦退院し、また正期産で陣痛がきたら入院する予定でした。主治医から約2割は退院できないと聞いていましたが、逆を言うと8割は退院できるのだから、たぶん退院できるだろうと軽く考えていました。しかし、点滴を止めたその日に陣痛がきてしまい、出産となってしまいました。

みなさんも、もしかしたら点滴を止めたその日に出産になるかもしれないと思って、出産に向けた準備は入院中にしておくことをオススメします!

また、退院できた8割の人も、退院した次の日に陣痛がくる場合や、逆に42週を過ぎても陣痛が来ない人もいるようです。出産がいつになるのかは医師でもわからないことですので、いつ陣痛がきてもいいように準備と心構えをしておきましょう。

Ⅴ.最後に

切迫早産の入院期間は、1~2週間とすぐ退院できる方もいるため、一概にいつと言うことはできません。しかし、赤ちゃんが万が一出ててきも大丈夫だろうと言える妊娠35~36週頃までは入院になる方が多いことも事実です。そのため、もし一旦入院となると2~3か月の長期入院となるかもしれないということは頭においておきましょう。