「早産」とは、妊娠22週から37週未満の分娩のことをいいます。
通常、赤ちゃんは妊娠37~42週未満の「正期産」と呼ばれる時期に生まれてきます。正期産で生まれてきた赤ちゃんと比べると、早産で生まれた赤ちゃんは未熟なため胎外での生活に適応できず、後遺症が残ったり残念ながら死産となってしまうケースもあります。
早産は、赤ちゃんにどのような影響があるのか、早産の原因や予防法などについて詳しくみていきましょう。
目次
Ⅰ.早産の定義 ~流産・正期産・過期産との違いは何?~
早産の定義を説明する前に、流産・早産・正期産・過期産の分類ごとの定義について説明していきます。
出産時期 | 妊娠週数 | 頻度 |
①流産 | 0週以降~22週未満 | 約15% |
②早産 | 22週以降~37週未満 | 約5% |
③正期産 | 37週以降~42週未満 | 約80% |
④過期産 | 42週以降 | 1%未満 |
①流産
流産とは:妊娠22週未満の妊娠の中絶を流産といいます。
頻度:約15%
胎児予後:妊娠22週未満は胎外生活は不可能とされています。
②早産
早産とは:妊娠22週から37週未満の分娩をいいます。
切迫早産とは、早産になりそうな状態(早産になる一歩手前の状態)をいいます。
頻度:約5%
胎児予後:妊娠22週以降は胎児の生存率は上がってきます。34週以降は正期産に近づくため、予後は比較的良好とされていますが、34週未満は合併症が出現するリスクが高いといわれています。
③正期産
正期産とは:妊娠37週から42週未満の分娩をいいます。
頻度:約80%
胎児予後:良好
④過期産
過期産とは:妊娠42週以降の分娩をいいます。
頻度:1%未満
胎児予後:正常であることが多いですが、合併症が発症する場合もあります。
上記で書き記したように、分娩の時期により言い方が決められています。
Ⅱ.早産になるとなぜ良くないの?早産による赤ちゃんへの影響は?
早産になるとなぜだめなのかというと、正期産よりも早く生まれてきてしまうと赤ちゃんの体の機能がしっかり整わずに生まれてきてしまうため、大きな障害が残ってしまったり、場合によっては亡くなってしまうからです。
下のグラフは、「早産における分娩週数と赤ちゃんの生存率と死亡率」です。ご覧ください。
上のグラフからも見てわかるように、早産になる週数が浅ければ浅いほど、赤ちゃんの生存率は低くなります。
特に妊娠34週以前に生まれた場合は、まだ肺の機能がしっかり整っていないため自力で呼吸することができないだけでなく、さまざまな合併症を発症するリスクも高くなります。
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Ⅲ.早産になる8つの原因
1.既往歴
前回の妊娠でも「早産」だった場合や、「頸管無力症」の既往がある場合は早産リスクが高くなります。また、「頸管円錐切除」を行っている場合も頸管が短くなっているため早産リスクが上がります。
※「頸管無力症」とは
妊娠中期に陣痛がないにもかかわらず子宮口が開いてしまい、子宮頸管が短縮し、妊娠が維持できなくなってしまう状態をいう。
※「頸管円錐切除」とは
子宮頸癌の手術や確定診断のために行われる手術。子宮頸部をレーザーメスもしくは超音波メスにより円錐状に切除する方法。
2.絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)
通常、赤ちゃんは「脱落膜」「絨毛膜」「羊膜」の3つの膜に包まれており、外敵から守られています。しかし、膣内の常在細菌が「絨毛膜」「羊膜」に感染し、炎症を起こした状態を絨毛膜羊膜炎といいます。
早産の原因として最も多く、発症すると短期間で早産に至ります。
3.多胎妊娠(たたいにんしん)
多胎妊娠(双子・三つ子)はお腹が大きくなるため、その分お腹も張りやすく、早産になりやすいといわれています。
双子の場合、早産率は約50%であり、一人を妊娠している場合と比べると、約12倍も早産になりやすいといわれています。
4.羊水過多症(ようすいかたしょう)
羊水量は妊娠週数が進むにつれて増加し、妊娠30週にピーク(正常な場合:羊水量500ml)となります。羊水過多は、妊娠の時期にかかわらず、羊水量が「800ml」を超える場合をいいます。
羊水量が多いと子宮はその分大きくなるため子宮の下部が過伸展してしまい、早産になりやすくなります。
5.前置胎盤(ぜんちたいばん)
胎盤が正常より低い位置で子宮壁に付着し、子宮の出口にかかっていたり覆っていたりする状態をいいます。発生頻度は0.3~0.5%です。子宮の出口に胎盤があるため、妊娠後期になるほど子宮収縮や子宮口の開大が進むため、早産リスクが高くなります。
6.常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)
正常位置に付着している胎盤が、赤ちゃんがお腹の中にいる時に子宮壁からはがれてしまう状態をいいます。発生頻度は0.5~1.3%であり、母児共に重篤な状況を招くおそれがあります。
7.生活習慣
過度なダイエットによる痩せや、妊婦の喫煙、ストレスなどが早産の原因となります。
特にたばこに含まれるニコチンには血管収縮する作用があるため、赤ちゃんへ送る酸素量が減り、早産リスクが上がります。喫煙する妊婦は、吸わない妊婦よりも1.4~1.5倍ほど早産になりやすいとわれています。
8.晩婚化による高齢出産
近年、晩婚化による高齢出産が増えています。35歳以上の妊娠では、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症率も増加するため、それに伴い早産リスクも上昇します。
Ⅳ.早産の5つの症状・兆候
以下のような症状がある場合は、注意しましょう。
1.お腹の張り
お腹が張るのは子宮が収縮している時です。妊娠週数が進んでくると正常でもお腹が張りやすくなります。安静にしているとおさまるお腹の張りは問題ありませんが、安静にしていてもお腹の張りがおさまらない場合は注意が必要です。
2.下腹部の痛み
お腹の痛みの程度は、「少しチクチクする感じ」という方もいれば、「突然ズキンと下腹部が痛くなった」という方もいるため人により感じ方が違います。しかし、多くは「下腹部の辺りに痛みを感じる」「お腹が張ると同時に痛くなる」と感じる方が多いようです。
3.性器出血
出血量はおりものに混じっている程度や、レバーのような塊がでることもあります。妊娠37週に満たない時期に出血があった場合は、少量でも必ず医師に伝えましょう。
4.破水
破水とは、卵膜(赤ちゃんと羊水を包んでいる膜)が破れ、羊水が外に出てくることをいいます。通常、破水はお産が近づいてくると起こるものですが、妊娠37週未満で破水が起こると、早産の危機が迫っているため、すぐに病院に連絡する必要があります。
5.子宮頸管の短縮
正常な子宮頸管の長さは、妊娠30週未満では35~40mm、妊娠32~40週では25~32mmと妊娠の週数が進むにつれて、少しずつ短くなります。しかし、子宮頸管が約30mm以下になると早産の危険性があるため注意が必要です。
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Ⅴ.早産を防ぐための5つの治療法
早産を未然に防ぐためには以下の5つの治療法があります。どの方法を選択するかは母児の状態や病状によって医師が選択しますが、早産にならないためには早くから治療を開始することが大切です!
【関連記事】コチラも一緒にお読みください!治療法についてさらに詳しく解説しています。
1.安静にする
早産にならないためには、とにかく「安静」にすることが一番です!安静は自宅で安静にするように言われる場合と、入院管理で安静になることもあります。いずれにしても、安静度は人によって異なるため、どれくらい安静にしたらよいのかは医師に確認するようにしましょう。
2.子宮収縮抑制剤の使用
子宮の収縮を抑え、おなかの張りや下腹部の痛みをとり、子宮の状態を正常に保って早産の進行を抑える効果があります。
【関連記事】コチラは、子宮収縮抑制剤についての効果や副作用、赤ちゃんに及ぼす影響についてなど、より詳しく解説しています。
3.抗菌薬の使用
早産の原因で最も多いのが絨毛膜羊膜炎と言われる感染症です。感染症の治療では、感染が広がるのを防止するために、「抗菌薬」の投与を行います。
4.ステロイドの治療
妊娠34週より早く生まれてきてしまうと、肺の機能がしっかり成熟していないため胎外に出ても自力で呼吸ができません。副腎皮質ステロイドを投与することで、胎児の肺機能を成熟させることができるだけでなく、脳・皮膚・消化官の成熟も促進させる働きがあります。
5.手術
頸管無力症の場合は、子宮口が開いてしまい、妊娠が維持できなくなってしまうため、頸管縫縮術(頸管を縫う手術)を行います。
Ⅵ.早産を防ぐ5つの予防法
1.早期発見・早期治療
早産にならないようにするためには、まず早産になる要因があるかないかを早期に発見し早期に治療することが1番です!
早産になりかけている状態(切迫早産)になったとしても、しっかり治療をすれば無事元気な赤ちゃんを正期産で生むことも可能です!まずは、
- 早産になる要因がないかを見つけることができるよう、必ず定期健診は受けること
- いつもと違う症状(性器出血やお腹の張りがおさまらない、腹痛、破水など)がある場合は早めに受診をすること
に気をつけましょう!
2.体を冷やさない
体が冷えると子宮が収縮するためお腹が張りやすくなります。お腹の張りが続くと早産の一歩手前の「切迫早産」になりやすいため、夏場でも体は冷やさないように注意しましょう。特に足首を冷やすと良くないため、靴下やレッグウォーマーなどをしておくことをおすすめします。
3.重たい荷物は持たない
妊婦さんが重たい荷物を持つと、腹圧がかかり(お腹に圧がかかる)、お腹が張りやすくなります。妊娠中は重たい荷物は持つのをさけ、家族に手伝ってもらうようにしましょう。
4.トコちゃんベルト(骨盤ベルト)や腹帯を装着する
骨盤がゆるむと、子宮が下がってくるためお腹が張りやすくなります。骨盤ベルトをすることで骨盤が支えられ、骨盤が開かないため子宮が下がらず、早産の予防になります。特に切迫早産と診断されている方は、早産予防のために骨盤ベルトの装着をオススメします。
5.切迫早産と診断されたら「安静」にする
早産の一歩手前の状態「切迫早産」と診断されてしまったら、「安静」が第一です!安静にすることで、早産になるのを予防することができます。
どれくらい安静にする必要があるのかは、母児の状態にもよりますので、必ず医師に確認するようにしましょう。
【関連記事】切迫早産と診断された方は、ぜひこちらも併せて読んで頂きたいです!早産にならないためには、切迫早産についても理解しておきましょう。
Ⅶ.最後に
早産は妊娠週数が浅ければ浅いほど、赤ちゃんが死亡してしまうケースや障害が残ってしまうケースが多いです。そのため、なるべく早産にならないように、早産の要因がある場合はそれをいち早く発見し、治療を早期に開始することが最も重要です。
切迫早産(早産になりそうな状態)と診断された場合も、必ずしも早産になるわけではありませんが、まずは、早産にならないためにしっかり治療を行うことが大切です。病因での治療以外にも、早産にならないよう自分で気をつけれることもあります(早産の予防法)。なるべく赤ちゃんが長くお腹の中で成長できるよう、自分でできる予防法は実践してみましょう。