入院生活

切迫早産で安静中|看護師指導のストレッチで運動不足を解消しよう!

切迫早産で自宅安静や入院をしている方は、治療のために安静が必要です。しかし、長期間安静にしていると心配になるのが、「運動不足」ではないでしょうか?

実際に、私が勤める産婦人科の切迫早産で入院されていた方々からも、
「ずっとベッドで寝たきりで体力がなくなったけど、出産する時に大丈夫?」
「こんなに動いてなくて、産んでからも育児ができるの?」
など、運動不足による体力低下や筋力低下を心配される声がたくさんありました。
それ以外にも、安静にしすぎて「肩こりがひどくなった」「ストレスが溜まる」などの声もありました。

それらの運動不足や肩こり、ストレスなどを解消するために、実際に私たち(看護師・助産師)が病院内で指導していたストレッチや運動法を、ここではご紹介したいと思います。

その前に、切迫早産についてあまりよく知らないという方は、先にこちら↓の記事をご覧になって頂くと、以下の内容が理解しやすいかと思います。

妊婦検診
プロが教える切迫早産完全ガイド!9つの原因と4つの症状産婦人科で働く看護師が切迫早産の原因や症状についてわかりやすく解説。自らも切迫早産で2ヵ月半入院したという体験談についても詳細まるわかり!...

Ⅰ.まず先に必ず読んでほしい注意点!!

これからお教えするストレッチや運動法は、切迫早産で入院されている方のために実際に看護師が指導していたものですが、すべての方が行えるわけではありません。
私が実際に指導の対象としていた方は、状態がある程度おちついており、病棟内の歩行許可がおりている方にのみ行っていました。

切迫早産の入院中にどの程度安静が必要なのかという「安静度」は、人により異なります。切迫症状が重度の場合は、本当に絶対安静が必要な場合もあり、食事の際に座ることや、トイレが許可されないこともあります。
※トイレが許可されない場合は、ベッドサイドにポータブルトイレを設置、または尿道に管(膀胱留置バルーンカテーテル)を挿入しバック内に尿が自然排泄されるようにします。排便は、差し込み便器を使いベッド上で行うこともあります。

上記のように、絶対安静が必要な状態であり、安静度の制限が大きい方や、深部静脈血栓症(手足や骨盤の深部静脈に血の塊ができてしまうこと)と診断されている方は、ストレッチや運動を行うことはできません。

また、入院中で歩行が許可されている方でも、ストレッチや運動を行う際は、必ず主治医もしくは看護師に許可を得て下さい!
お教えするのはベッド上で行うような簡単なストレッチですので、お腹への負担はほとんどありませんが、「安静度」は人により異なります。本当に自分がストレッチをできる状態なのかは自己判断せずに、必ず確認するようにしましょう!
また、医師の許可がおりた場合でも、ストレッチをすることで、お腹の張りが強くなる場合は、すぐに中止して下さい!

以上の点をしっかりと守っていただき、安全・安心に運動不足を解消していきましょう。

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Ⅱ.切迫早産安静中の運動不足解消①~寝たままできるストレッチ・運動編~

切迫早産で入院中や自宅安静中など安静が必要な方におすすめのベッドに寝たままの状態で行えるストレッチ・運動法」です。
とても簡単でお腹への負担もほとんどありませんので、時間や回数を気にせず、好きな時にやってみましょう。

1.足首のストレッチ

まず、ベッドに横になった状態で、足首のストレッチをしていきましょう。
下の写真は人にやってもらっているイメージ写真になりますが、自分1人でも行えますのでやってみましょう。

①写真のようにつま先を自分の方に倒した後、つま先を反対側に伸ばす×5回

②つま先を左右に倒す(ワイパーのように)×5回

③足首をぐるぐる回す×5回

2.膝の運動

切迫早産の方は治療のため長期間安静にすることで、足の筋力が落ちてしまいます。患者さんの中には、歩く許可がでたので、いざ歩こうと思ったら足がふらふらでしっかり歩けなかった!なんてことも…。
少し膝を動かすだけでも、筋力低下の程度が違いますので、無理なくゆっくりと足を動かしてみましょう。

①ベッドに寝た状態で右膝を立て、左膝は伸ばした状態にする

②立てた右膝を右側の床に付くようにゆっくり倒す

③右膝をゆっくり元に戻す

反対側も同様に行う!左右交互に5回ずつ行おう!

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3.膝裏~ふくらはぎの運動

ふくらはぎは心臓と同じように全身の血流を流すポンプのような働きをするため、「第二の心臓」と呼ばれています。
切迫早産の方は得に「冷え」に注意しなければなりません。ふくらはぎを刺激することで、血流を促進し、身体の冷えを改善しましょう!

①寝た状態で両膝を立てる

②左膝の上に右のふくらはぎを乗せて、ゴシゴシ、トントントンとゆっくり滑らせるよう前後に動かしながら刺激する。
反対側も同様に行う!

※膝裏~ふくらはぎまでまんべんなく刺激しよう!

4.骨盤のストレッチ

骨盤ストレッチを行うことで、骨盤まわりの筋肉をゆるめ、ゆがんだ骨盤を整える効果があります。腰痛にも効果的です。

①両膝を立てる

②両膝を揃えて、左右交互にゆっくり倒す×5回

5.腕のストレッチ

腕のストレッチも寝たままの状態で行います。
※下の写真は座って行っていますが、イメージになりますので、寝たまま行いましょう!

腕も使わないと筋力が低下してしまいます。気持ちいい程度に腕を伸ばしてストレッチしておきましょう。

①まず両腕を上にあげ手を組み、背筋が伸びるように手を上に押し上げる

 

②次は、右手首を左手で掴み、身体を少し左側に傾けならが右の脇腹を伸ばす
※反対側も同様に行う!

 

③今度は、右腕を胸に引き寄せ、左腕で伸ばしたい方の腕をさらに引きよせる。
肩を伸ばすようなイメージで行い、数秒間キープする。
※反対側も同様に行う!

 

④腕を胸の前に伸ばす。手先を手前に引き、腕の前側を伸ばす。
※左右交互にゆっくり行う

⑤両手を胸の前に伸ばし、力を抜いて手首をブラブラブラと数秒間振る

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Ⅲ.切迫早産安静中の運動不足解消②~座って行うストレッチ・運動編~

次は、切迫早産で入院中の方の中でも、比較的安静度の制限が緩い方向きのストレッチ・運動法です。
このストレッチを私が指導していた妊婦さんは、子宮収縮もおちついており、病棟内の歩行やシャワー浴も許可されている方でした。子宮収縮抑制剤(ウテメリンなど)の点滴を行っている方でも、医師の許可があればストレッチは可能です。

※このストレッチは、座ることに制限がある方はしてはいけません!!
また、歩行許可がおりている方でも、このストレッチを行うには必ず医師に許可を取る必要があります。まずは、担当の看護師さんに確認してみましょう!

1.首のストレッチ

首も意外と凝りますよね!?
切迫早産で入院中の方は、病院の枕が合わなくて首が凝ったという声もありました。
首のストレッチを行うことで、首の筋肉の緊張をほぐし、コリを解消しましょう。

①上の写真のように頭に右手を置き、首を右側に倒す

②左手は写真のように伸ばし、なるべく身体から遠くに離す。
(伸ばす首側の手を遠くに離すように伸ばすことで、より首が伸びます)
※反対側も同様に行う

③首を前、後ろと前後に倒し、首の前と後ろを伸ばす

④首をゆっくり大きく回す(左右)

2.腰のストレッチ

切迫早産で安静にしている時間が長くなると腰が痛くなりますよね。少し腰を伸ばすだけでも、腰痛がましになりますよ!

①腕と視線を後ろにまわし、腰をねじる

②四つん這いの体勢から、両腕は前に伸ばしたままお尻をひく。腰が伸びているのを感じる。

3.タオルを使って肩~肩甲骨、背中のストレッチ

元々肩こりの方って多いですよね?切迫早産で入院中、自宅安静中の方は身体が凝り固まることでさらに悪化し、肩こりに悩まされている方も多いと思います。

私が指導した患者さんからは、肩~肩甲骨、背中のストレッチを毎日行うだけで、「肩こりが解消されてスッキリした」「体が軽くなった」という声がたくさん聞けました。
肩こりでお困りの妊婦さんは、ぜひ試してみて下さい!

まずフェイスタオルを準備してください!フェイスタオルがない方はバスタオルでも大丈夫です。タオルを使用することで、より簡単に気持ちよくストレッチすることができます!

①タオルの両端を持ち、タオルはピンと張った状態のまま両手を上にあげる

②ゆっくり肘を下げ(脇がしまるように)、タオルが肩のラインに来るくらいまでさげる

③左右の肩甲骨が引き合うことを意識しながら、10秒キープ!

①~③を数回繰り返す

 

①タオルの両端を持ち、腕を胸の前に出す

②タオルをピンと張ったまま、ゆっくり腕を上に上げ、腕を後ろにまわす

③後ろから前に腕をまわす

①~③を数回繰り返す

 

①タオルの両端を持ち、腕を上にあげ、右脇が伸びるのを感じながら身体を左に倒し、数秒キープする
※タオルはピンと張ったまま行う!

②次は、左脇が伸びるのを感じながら、身体を右に倒し、数秒キープする

①②を数回繰り返す

 

①背中の後ろでタオルを縦に持ち、前後にタオルを上げ下げする

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Ⅳ.切迫早産安静中でも寝たままできるマッサージ法!

切迫早産で安静にしていると、身体がコリ固まり体が痛くなったり、肩こり、腰痛になってしまうでしょう。

今からお教えする方法は、「筋膜リリース」というマッサージ法であり、筋膜ラインに圧をかけて筋膜をリリース(解放)する方法です
このマッサージは、手持ちのフェイスタオルで簡単にできますし、テニスボールを使用してもいいでしょう!

※筋膜リリースとは
筋膜は筋肉や骨、血管や神経、臓器などを包み込んでいる膜で、「第二の骨格」ともよばれるほど重要な役割を担っています。

しかし、筋膜は筋活動が少ないと硬くなりやすく、筋膜が硬くなることによってコリや痛みが生じてしまいます。

つまり運動不足の方は筋活動が少なくて筋膜の伸び縮みが行われないので、そのまま硬くなってしまうということですその筋膜の硬さを和らげる方法が「筋膜リリース」というわけです。

筋膜リリースでは、痛みの引き金になっている部分に軽めの圧迫を行い、筋膜をほぐしていきます。これによって、コリや痛みが改善されます。

タオル結び
①フェイスタオルを写真のようにくくる!

※写真は1回だけくくっているが、2回くくった方がよりコリにききます
※フェイスタオルではなく、テニスボールで代用しても結構です!

②ベッドに寝て、タオルの結び目(テニスボール)をほぐしたい部分に当て、ゴリゴリと凝りをほぐす。
※肩甲骨をほぐしたい場合は、肩甲骨にタオルの結び目(テニスボール)を当て、ベッドに結び目を押しつけて圧迫しながら腕をゆっくり回すと、肩甲骨がほぐれます
腰や肩、背中、ふくらはぎ、膝裏なども同様に行ってみよう!

Ⅴ.さいごに

切迫早産で安静が必要な方は運動不足で体の痛みや肩こりに悩まされたり、ストレスが溜まってイライラとするかもしれません。

切迫早産は安静が第一ですので、積極的に運動を行うことはおすすめできませんが、医師の許可の元であればお腹に負担がかからないようなストレッチやマッサージを行うことは可能です!

ここでお教えする方法で、少しでも肩こりや腰痛、運動不足が解消され、身体が楽になってもらえたらと思います。