私が産婦人科で看護師として働く中で、妊婦さんからよく聞く悩みの中のひとつが「便秘」でした。
特に切迫早産の方は「便秘のためいきむと、お腹が張るので怖い」と言われる方も多く、どうすれば便秘が解消できるのかと皆さん悩まれていました。
ここでは、私が患者さんに指導していた便秘解消法から、妊婦でも酸化マグネシウム(マグミット)やピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)などの便秘薬を飲んでも大丈夫なのかについても詳しく解説していきたいと思います。
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目次
Ⅰ.妊娠すると「便秘」になりやすい5つの原因
原因①子宮が大きくなり腸を圧迫
妊娠すると赤ちゃんが成長するにつれ子宮もどんどん大きくなります。大きくなった子宮が腸を圧迫してしまうため、腸の動きが悪くなり便秘になりやすくなります。
原因②妊娠によるホルモンの影響
妊婦すると、妊娠を維持しようとするホルモン「プロゲステロン」が多く分泌されます。この「プロゲステロン」は腸の運動を抑える働きもあるため、腸蠕動が弱くなり便秘傾向になってしまいます。
原因③つわりによる食事の偏り
妊娠初期はつわりにより食事に偏りがでてきてしまいます。つわりの程度は個人差がありますが、病院に来られる妊婦さんの中には食事を全くとることができず、水分すら飲めないという方もいらっしゃいました。
いつもの食事ができないだけでなく、偏った食事や水分摂取量も少なくなることで、便秘傾向になってしまいます。
原因④精神的・身体的ストレス
妊娠すると、赤ちゃんの成長や、これからの生活、育児や家事、金銭面への不安などさまざまなことを考えて精神的にストレスを抱えてしまいがちです。また、お腹が大きくなり今までのように動くことができなくなることで身体的にもストレスが溜まることもあるでしょう。これらのストレスにより自律神経が乱れることで、腸の動きが悪くなり、便秘になってしまいます。
≫切迫早産のストレス解消法を知りたい方はこちらで詳しく解説しています↓
原因⑤運動不足
妊婦さんは、お腹が大きくなってくると体を動かすのがしんどくなり、運動不足になりがちです。運動不足は腸の動きも弱めるため便秘傾向になってしまいます。
≫運動不足を解消するために、切迫早産でもできるストレッチ法をみてみましょう↓
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Ⅱ.切迫早産の方は特に「便秘」になりやすい?
妊娠中は上記のような理由から便秘になりやすいのですが、切迫早産の方は特に便秘になりやすいと言えます。
切迫早産の第一治療は「とくかく安静にすること」です。
切迫症状がひどい時は、入院して絶対安静になる方もいます。症状により安静度は異なりますが、ひどい場合はずっとベッドに寝たきりで、トイレへも行けない(ベッド上で行うなど)状態のこともあります。そんな生活が1ヵ月以上続くことも稀ではありません。
そうなってくると、精神的なストレスが溜まりますし、全く動かないため運動不足になるだけでなく、筋力も低下してきてしまいます。
以上のような理由から、切迫早産の方は特に便秘になりやすいといえるでしょう。
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Ⅲ.切迫早産「便秘」でいきむのはダメ?
妊娠後期になりお腹が大きくなると、「排便時にいきむと赤ちゃんが出てきそうで怖い」とお思いの方もいるかもしれません。
赤ちゃんは丈夫な卵膜に覆われているため、排便時にいきむくらいでは破水したり赤ちゃんが出てくることはありません。
しかし、切迫早産で入院しているような場合、便秘は注意しなくてはなりません。
切迫早産で入院中はなるべくお腹が張らないよう安静に過ごさなくてはなりません。便秘のため排便時にいきむことでお腹が張りやすくなってしまいます。
切迫早産の方は、なるべくいきまずに排便できるよう、「水分をしっかり取る」「酸化マグネシウム(マグミット)を内服する」などして便を柔らかくし出しやすい状態にしておくことをおすすめします。
Ⅳ.便秘薬を内服する前できる便秘解消法!
妊婦さんが便秘になると、産婦人科では緩下剤が処方されます。処方されるお薬はもちろん妊婦さんでも服用しても赤ちゃんに影響がないようなお薬ですが、お薬を内服する前にできることはやってみましょう!
①食物繊維の多い食事をし、バランスよく食べる
②ヨーグルトなど乳製品で腸内環境を整える
③適度な運動を行う
④便意を我慢しない
⑤水分をしっかり取る
⑥睡眠をしっかりとり規則正しい生活を行う
⑦トイレに行く習慣をつける
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Ⅴ.妊婦さんが便秘になると処方される薬は?
妊娠中に処方される便秘の薬といえば、酸化マグネシウム(マグミット)とピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)です。
①酸化マグネシウム(マグミット)
酸化マグネシウムが腸内に水分を集め、便を柔らかくし膨らませ、便を促します。
腸を直接刺激しないため、お腹が痛くなりにくい非刺激性です。
また、習慣性もならないため長期的に使える薬です。
酸化マグネシウム(マグミット)は、便を柔らかくするお薬ですので、「便秘でいきむのが怖い」という妊婦さん(特に切迫早産の方)にも向いています。
通常、薬は決められた容量や飲む日時を守るのが原則ですが、酸化マグネシウム(マグミット)は便が柔らかくなりすぎた場合は飲むのを一旦ストップしたり、飲む数を減らすなど調整が可能なのもこの薬の特長です。
コップ1杯の水で服用するなど、少し多めに水分を取るとより効果的です。
②ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)
大腸を刺激し、腸の働きを活発にすることで便を促します。
通常8~10時間で効果が現れます。習慣性があるため、長期的な服用は向きません。
通常は、酸化マグネシウム(マグミット)のみの内服で便秘が解消されるのであれば、ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)は内服しなくてもいいかと思います。どうしても頑固な便秘で困ったという時に内服するイメージでいいかと思います。
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Ⅵ.妊婦が便秘薬を飲んでも本当に大丈夫?副作用は?
酸化マグネシウム(マグミット)は消化管で吸収されず、腸の中でのみ働くため、赤ちゃんに影響はないとされており、多くの妊婦さんに処方されています。
ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)に関しては、大量投与した場合子宮収縮を起こす場合があるため注意と言われておりますが、通常の用法容量であればまず問題ないとされています。ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)の用法容量に関しては必ず処方された量を守るようにしましょう。
とはいっても、妊娠中はなるべく薬は飲みたくないものですよね。
便秘薬を飲む前に、食物繊維の多い食事をとったり、規則正しい生活をするなど自分でできる便秘解消法は行ってみましょう。
その上でやっぱり便秘が解消されないという方は、赤ちゃんに影響はないとされていますので、お薬に頼ってみるのもいいと思います。便秘により苦しい思いをしたり、いきむことでお腹の張りが増すのであれば、薬を飲んで排便コントロールをした方が良い場合もあります。
お薬に関して不安なことがある場合は、担当の主治医や薬剤師に必ず相談をして、薬効や副作用について直接聞かれることをおすすめします。